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ユーザーさまの声  Vol.2「デジタル作業分析システム 全業種対応版」

ユーザーさま

物流業界で一歩先を行くIE改善
動作分析システムを物流工程の「標準モデルづくり」と「技術改良」に活用人と技術に向き合い、基盤固めと新たな事業両立

ユーザーさま

ワコールグループの物流専門会社、ワコール流通株式会社様
滋賀県守山市
工場管理2017年1月号 Vol.63掲載記事より


モノづくり現場だけではなく、物流現場においてもIEを用いて生産性向上に取り組む動きが広がっている。ワコールグループのワコール流通は、IEに取り組むなかで改善効率化を図るツールとして動画分析システムを活用。システム導入後は着実に改善成果を上げている。同社が採用したシステムは、ペガサスミシン製造の「Digital Process Analysis System(DPA Pro)」。2008年に開発された縫製業向けデジタル作業分析システム「DPA」は、片手の指2本だけというシンプルな操作性が特徴で、国内外の縫製工場で多数導入されている。DPA ProはDPAの進化版だ。同システムは現場目線にこだわった課題解決や教育ツールとして、幅広い業界で使われている。


物流業務の作業標準をつくってレベルアップさせていきたい

ワコール流通は、インナーやスポーツウェアをメインに扱うワコールグループの物流専門会社として、2000年4月に法人化された。

「1980年代前半くらいから、アパレル大手は物流機能を分離する傾向にあり、私どももその流れに乗ってきました。なかには物流専門企業に業務委託するケースもありましたが、われわれは、社内で物流プロを育てたいと自前主義を貫いています」と、牧邦彦社長はグループの方向性を語る。

国内向け製品は、国内5工場、海外4工場で製造され、それらが全国4拠点にある流通センターに入荷、そこで返品・検査・ピッキング・値札などの過程を経て、百貨店や専門点など販売拠点へ出荷される。流通センターはこれらを一元管理するほか、各工場とはオンラインで結ばれているため、入荷状況などがリアルタイムで共有でき、小売店へのデリバリーに活用されている。

物流業務の改革を推進する同社では、①生産性向上、②共同配送などによる輸配送ルートの合理化、③包装材料統一によるコスト削減と商品保管効率向上、④グループ内SMCの改革、⑤人事改革や育成による労務政策の充実などに積極的に取り組んでおり、このうち、①の生産性向上に大きく貢献しているツールがDPA Proだ。

生産性向上にメスを入れたのは、牧社長がワコール流通の社長に就任した3年半前にさかのぼる。グループ内の縫製会社の社長の経験もある牧社長は、生産現場では当然のように行われているIEが、物流の現場ではまったく行われていないことに衝撃を受けた。

「作業工程を標準化して、モデル工程をつくり、それを1つずつレベルアップさせていく─そうしたことが物流では行われていませんでした。モノをつくる工場と流通センターでは、やることは当然異なりますが、流通センターでは、ピッキングや枚数カウント、箱詰めなどあらゆる工程で人の手を使っています。であればIEの概念を扱えるはずだと考え、作業の動画を撮って分析して標準をつくり、それをブラッシュアップしていこうと考えました」と牧社長は、自分たちで作業工程改善に取り組んだ様子を語る。


ストップウォッチ片手に作業工程改善にチャレンジ

ビデオ撮影は4カ所ある流通センターのうち、国内向けにつくられたワコール製品の半量を取り扱う守山流通センターで実施。まず値付け作業で撮影することにした。さまざまな工程があるなか、値付けから取り掛かった理由を牧社長はこう語る。

「もちろんゆくゆくは主要業務であるピッキングに展開させたいと考えていましたが、先行導入していたグループ会社の縫製工場では、“座って行う”状態でも作業に差が出ていました。そこで、それと近い状況の作業から始めたほうが導入としては適切だと考えたのです」

ビデオ撮影するにあたり、牧社長は従業員に「動画を撮るけれども、それでどうこうするのではない。そのなかで誰のやり方が体にムリがかからず、疲れないかを追求したい」と伝えた。

「作業者は、良かれと思って各自の個性や経験を踏まえて作業しているわけですが、それがもっとムダなく体に優しい動きになっているかを検証したことがありません。そこを検証しようと伝えました」

センターで働く約500人のうち、350人は主婦を中心としたパートである。そうしたことを踏まえ、牧社長は日頃から「こうせよ」などトップダウン的な対応はもちろん、数字的な要求もしていない。あくまでも現場重視を貫いており、その姿勢は作業標準づくりにおいても同じだった。

牧社長ら幹部は現場には入らずに、現場メンバーだけで撮影したビデオを見て「このモノをとる作業はAさんの動きがムダがないよね」「製品の持ち方はBさんがいいね」とミーティングを重ねた。「自分はムダな動きをしていない」と思っていても、客観的に動画を見たら、不必要に手を伸ばしていたりと、本人が自分で自分のムダを知ることにもなった。多くのメンバーが「良い」と認めた動きをつなぎ合わせて標準をつくりこみ、3カ月後には、生産性が2割以上向上した。


簡単に動画比較ができるのがDPA Proの最大のメリット

「この時点で、『画像によって標準をつくりこむ』という考えは間違っていないことを検証できました。ところが、商品を取る、値札機に当てる、商品を置く、という値付け作業のそれぞれの細かい動作のスタートとゴールの時間を、ストップウォッチ片手に計測するのには、膨大な時間と労力が必要でした」と牧社長は苦労した様子を振り返る。

「もう少し簡単にならないか」と悩んでいたあるとき、牧社長は北陸ワコール縫製を訪問する機会があった。そこで縫製作業用の動画比較ソフト「DPA」を見せてもらい、「これなら画像比較がラクにでき、スピード感をもって他の工程にも水平展開できるのでは」と興味をもつ。すぐに開発・製造元のペガサスミシン製造に連絡したところ、縫製用を他の業種でも使えるようにバージョンアップさせた「DPA Pro」があることを知り、導入に向けて検討が始まった。

何度かのミーティングを経て、DPA Proを3台導入。パソコンスキルがない人でも、右手でマウスをクリックするだけというシンプルな操作性をもつが、牧社長はまずは各部門の業務をわかっていて、パソコンが得意そうなメンバーを各部署で1〜2名を指名。そのメンバーがペガサスミシン製造のレクチャーを受け、各部門内で伝達させるというプロセスを踏んだ。

牧社長は「簡単に動画の比較ができるのがDPA Proの最大のメリット。このメリットを使って、標準モデルをつくるとともに、技術改良にも活用しています」と話す。

「標準モデルをつくる」には、AさんとBさん、BさんとCさん…というように、1対1での比較を続け、最終型を作業標準にして作業工程のベストをつくっている。そうしていくと、ベテランと新人で大きな違いが出てくるのもわかる。たとえば、「ピンオン」と呼ばれる「値付け工程」では、製品についているラベルを袋から取り出して、それを値付け機に当てて値札をつけ、袋に戻し入れる、というオペレーションになるが、ベテランは、袋から商品を出さずにラベルだけを引き出して値付け機に当てている。一方、新人は製品の本体をかなり出している。そのため、出すのも入れ直すのにも時間がかかってしまっていた。

「1回1.5秒か2秒の差ではありますが、この差が大きい。いかにコンマ何秒を詰めるかが生産性向上に大きく影響します」と牧社長は言う。


標準モデルの構築だけでなく、技術改良や教育ツールにも

「技術改良」としての展開例として、「ピッキング」の1つ、「ショーツのカウント」を紹介しよう。ここでは、ハンディターミナルで商品についた1枚1枚の伝票を読み込むのだが、新人はハンディターミナルを1度置いて、スキャンした商品を整えて、枚数を数え直し、丸めて袋に入れる。ベテランはまとめた束を1度に取って、中指を補助的に使って、連続的に読み込む。

「ベテランがやっているこの方法は、慣れないとできません。ですからこれを標準にはできませんが、次の段階としてここを目指そうということはできます。つまりこの動画を見せることで、1人ひとりの技量がアップし、結果として生産性向上につながります」

当然、これらの動画や静止画は教育ツールとしても活用できる。新人教育のほか、派遣スタッフや他部署からの応援者が来たとき、現場に入る前に、担当作業の「良い例」と「悪い例」の動画・静止画を見ることで、現場での作業がスムーズにできる。

「指導・教育のタイムロスもなくなりました。これらは標準というベースがあってこそできること」と、牧社長は標準づくりの重要性を力説する。

作業標準ができた現在は、iPadやスマートフォンに取り込んで見られるようにするなど、「第2ステージに来ている」(牧社長)。そうすることで、作業からいったん離れてパソコンに向かって確認する必要がないし、作業マニュアルの変更も容易なので常に最新版が維持される。

「特に若い人たちに任せると、機械操作に慣れているためかスピーディに改善してくれます。私も、100点を目指さなくていい。65点でいいのでスピードを重視して、そこからブラッシュアップしていけばいい、と言っています。ただあまり撫で回すと、ベースが何だったのかわからなくなるので、そこは戻りつつやるように伝えています」と、やはり基本の大切さを語る。


レベルアップにつなげるにはIEマンの育成が必須

DPA Proの導入・運用にあたっては、「すでに自分たちで導入していたものに近い形だったので、スムーズに移行できました」と、牧社長は特に障害はなかった様子を語り、「導入後、現場からはものすごく喜ばれました」と続ける。

値付けに関しては、生産性はさらに1割アップ。24人で行っていた作業が19人でできるようになった。退職してもらうということではなく、欠員ができたときに補充をしなくてすむようになり、コスト削減につながっている。

今では守山流通センターではほぼ全工程で導入済みで、今後は他センターへの普及を検討中だ。

「労働集約型産業は、人の動きこそがコアの分析対象であるにもかかわらず、『今は1時間当たり100枚だから105枚を目指そう』と数字的な結果だけを追っていて、作業性そのものの動きを分析することができていません。とはいえ、従来型の工場で実施されているIEを、労働集約産業にそのまま当てはめるのはムリがあり、現場発想でやったほうが浸透すると思います。当社では、非正規社員が多く、しかも実働時間5時間というなかで、どうコンスタントに疲れることなく気持ちよく働いてもらえるかを導きたいと考えました。『もっとラクな動きを考えよう』と伝え、その改善処方を現場から出してもらえば、結果として生産性が上がります。そうでないと長続きしません。人は機械ではないのですから」

牧社長は、物流業界だけでなく、人の手を使うあらゆる業種にIEは有効だと訴える。ただ、単にツールの導入だけではうまく活かしきれないとも指摘する。

「動作を比較して、『違うね』だけでは深掘りはできません。なぜ違うのか、距離の問題か、手つきなのかなど突き詰めるのはIEのベテランでないと難しい。われわれは縫製工場にそうしたベテランがいたので、分析の部分は彼らに助けてもらいました。しかし今後、高齢化もあり、人が不足する可能性があります。ですから、レベルアップにつなげるには、そのIEの技術を中堅に伝承していくことが重要だと思っています」

IEマンの育成は産業界全体の課題でもあり、そのための解決策の1つとして牧社長は、ツールを開発するベンダーがユーザーを集めて情報交換会を実施することを提案する。

「ツールをどう使っているかという情報も大事ですが、『IEマンをどう育てているか』という人の育成・教育について交流ができれば、もう少し質が高くなるでしょう」と、業界全体の発展にも目を向ける。

IEの浸透が遅れている物流業界で、一歩先をいくワコール流通。同社の取組みに刺激を受け、多くの組織でIEが取り入れられ、活用が進めば、産業界全体の底上げにもつながっていくだろう。

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